レザークラフト研究

横浜で小さなレザークラフト教室をしています。

革を縫うミシンのお話 工業用ミシンの購入の検討の際に その3:糸


この記事は、

の続きです。

この記事も、ミシンや糸の仕様説明のコーナーではなく、自分が使ってみて思うこと、などのお話です。

 

 

【ミシン糸について】

 

糸の番手

 

糸は、例えば、60番、50番、・・・5番、1番、・・・と、一般に、数字が小さくなるにつれて、糸が太くなります。

 

ミシンの場合は、普通地の厚さの布を縫う場合、60番、50番、40番くらい、

鞄の裏地で少し厚手の布を縫う場合、30番くらい、

革をミシンで縫う場合、厚さによって使い分けますが、30番より太い糸、といった感じでしょうか。

特に決まりは無いので、作品の感じ、縫う箇所、革の厚み、など、様々な条件で、自分で選んでいきます。

 

1番手の糸は、使える工業用ミシンがそう多くは無かったと思いますので、使いたい場合、工業用ミシンの購入前に、事前に確認しておくことをおすすめします。

 

私のレザークラフト教室にあるミシン糸は、布用に60、50、30、革用に20、8、5番です。ミシンを使うときは、内縫いの作品のほうが多いので、革には20番、8番くらいを一番使うかもしれません。

ヌメ革にしっかり糸を目立させて縫いたい場合は、5番以上になるのかな?

5番でも、かなり太いです。1番、0番、00番と、段々タコ糸に近づいていく感じを想像していただければ、おわかりかと思います。

ビニモ 5番手の糸



ミシンの縫目のピッチ

 

縫目のピッチは、もう好みの問題なのですが、革をミシンで縫う場合、縫目のピッチは4ミリ以上くらいに設定しておくのが良いかもしれません。そもそも革は布地のように薄くないため、あまり細かいピッチにはしないことが多いと思います。

革の質感や厚みで、綺麗に見えるピッチの間隔があると思うので、実際に試し縫いをしてみて、合わせていくようになります。

内縫いや、縫い割りの場合、あまり縫目のピッチが大きいと、表からみたときに縫目と縫目の間がスカスカな感じになりますので、そういう場合は、少しピッチを短めにして縫うと良いと思います。

縫目の調整ダイヤル

 

糸締まり

 

ミシン関連の言葉で、糸締まりという言葉を聞いたことがあるかもしれません。

文字どおり、糸の張り(テンション)の具合のことです。

革を縫うための工業用ミシンを一度でも使ったことがあれば、はじめに糸立て棒から針穴まで糸を通して準備していると、「糸調子ダイヤル(糸をクルッと挟む所)」の所で、家庭用ミシンとは段違いの、とても強い圧がかかっていることに気が付くかもしれません。

糸調整ダイヤル

革の厚みなどで糸調子を決めますが、ちょうど良いと、糸の張りが強すぎず弱すぎず、縫目が綺麗になります。

革を縫うのに開発されたという糸「ビニモ」はポリエステルの糸ですが、使ったことがある人ならわかると思いますが、誤って糸巻きを床に落としたりすると、どこまでも糸がバラバラとほぐれてしまって、巻き直すのが大変だったりするぐらい、とてもスルスルしています。よく手芸屋さんに売っている、布用のポリエステルのミシン糸とは全然違う、殆ど引っ掛かりがない、というのが特徴の糸です。

 

このスルスルの糸にしっかりと縫目を作ってもらうためには、「糸調子ダイヤル」の所で、ギュッっと糸が引っ張られて一定の強さを保ち、それから天秤を通って、さらに針穴へ落ちてきてくれなければなりません。

この上糸の状態と、下糸の圧とのバランスが良いと、糸締まりの良い状態、すなわち、綺麗な縫目になります。

 

作品の革の大きさに余裕がある場合は、試し縫い用に革を用意できますが、そんなに余っていない場合、殆どぶっつけ本番になってしまうことがあります。ミシン縫いで作品を作る場合は、少しだけ余分を考えて革を買うと、試し縫いも安心してできると思います。

 

私の場合は、工場のように何百個も同じものを作るわけではなく、ミシンに座るたびに違う作品を縫うことが殆どなので、そのたびに糸調子を整えなければならないのが、結構ストレスではあります( ´∀` )

手縫いの場合は糸に蝋を塗ることによって、糸どうしがペタッとくっついて、糸を引き締めたとき、しっかり締まります。つまり、蝋によって糸調子を行える、と思います。しかし、ミシンの場合、まず試し縫いをして、自分で糸調子が良いか判断しなければなりません。また、糸調子ダイヤルの数値の基準は、そもそも何を縫うときはいくつ、とか決まっているわけではないので、ミシンの使いはじめはなかなか苦労します。

 

 

ミシン糸の素材

 

ミシン糸はポリエステル糸が多く売られていますが、ミシン用の麻糸もあります。種類は限られていたと思いますが、やっぱり風合いが違うので、使ってみると面白いです。

 

 

手縫用の糸、ミシン用の糸、とは?

 

糸は数本の糸をねじって撚ってありますが、

基本的には、糸の撚りの方向が、手縫い用とミシン用とでは違っています。

 

手縫糸は右撚り(S撚り)

ミシン糸は左撚り(Z撚り)

 

と、撚りの方向が真逆になっているそうです(ルーペで拡大したらわかる?!)

そのため、ミシン糸で手縫いをすると、縫えることは縫えますが、(理論上は)撚りが戻ってほぐれていってしまいます。糸が撚られていない弱い状態になり、糸切れ、絡まりを起こしたりします。きちんと撚られていない状態では、糸の太さが平均していないので、綺麗な縫目になりません。

ですので、できるだけ手縫いには手縫糸を使ったほうが、仕上がりは綺麗になります。

使いたい色がミシン糸ならあるのに・・・そういう場合は、短い距離を縫うのにとどめておくと良いかもしれません(長い距離になればなるほど、手縫糸であっても、だんだんとクルクルと絡んでくるので)。

 

 

ミシン糸のブランド

 

まあ、ここの項は、どうでもよいような内容です。

 

レザークラフトでよく聞く糸のブランドは、ポリエステル糸の「ビニモ」でしょうか。皮革専用で開発されたそうです。光沢感、変質しにくい、強い、色が豊富、そんな点が人気の秘密かも知れません。

ビニモは手縫い用、ミシン用と両方あります。00番(かなり太い)まであるようです。

さらに「ボンド仕様」という種類もあり、「ビニモMBT」がボンド糸です。中心が接着加工されていて、撚り割れがしないそうです。確か通常タイプより少し値段が高いですね。私は今まで使っていて、特に撚り割れに関してトラブルが起きたことは無いので、通常タイプの糸で充分かな、と思っています。

 

 

ここまで、革を縫うミシンで良く使う種類の糸についてのみ、書いてみました。

 

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