知人の依頼でこんなダブルのファスナーのポーチを作ってみました。
2つの部屋に分かれていて、それぞれファスナーで開閉します。
後ろ側にナイロンテープがあるので、ウエストのベルトに通して使うことができます。
調子に乗って、色違いも作ってみました。
【概要】
写真のようなポーチでは、「クロムなめし」という、とても柔かくしなやかで、表面の加工により水をはじきやすい革をよく使います。
また、ミシンや手縫いによる「内縫い」(このポーチは内縫いで作っています)に適しています。
「内縫い」は文字通り、外側から縫い目が見えません。
内側に縫い目があるということは、革の裏側(床面)から縫って、袋状に縫いあげてから、表にひっくり返す、という手順で作ります。
★材料について
<革>
革は必ずクロムなめしの柔かい革を使います。
ここでいう「柔かい」の程度は、鞄を縫って作っても絶対に自立しなさそうな、ぐにゃぐにゃの柔かさのことです。
革材料専門店以外でも、大きめの手芸材料店などでも売っている場合があります。
革の厚みは、厚くても1㎜まで、が良いと思います。
<ファスナー>
普通のファスナーでも、
ポーチの写真のような、頭合わせタイプのファスナー(スライダーが2つある)でも、
どちらでも良いです。
頭合わせのファスナーにしておくと、好きな位置で閉められるため、特にウエストのベルトに付けたい場合は、身体をあまりひねらなくても楽に開閉できます。
<プラスチック製パイピング芯>
今回のこのポーチでは、革が非常に柔かいため、成型するために、細いプラスチック製の、パイピング芯があったほうが作りやすいです。
手芸店などで買えます。
ただ、経年により、この手のプラスチック系のパイピング芯は、革が劣化してきた際に中から飛び出してくることがあります。
これはもう仕方がないことです。予めそういう可能性があることをわかっておくと良いです。
なお、革漉機がある人は、革だけでパイピング芯のパーツを作ることもできると思います。
<テープ(ベルトループ用)>
素材はナイロン、アクリルどちらでも構いません。
ウエストのベルトに通して使う目的のため、へたりが早いと困ります。
硬めでしっかりしたテープを選びます。
(例:厚さ2ミリのヌメ革を曲げようとしたときの硬さくらい。
ちょっとわかりにくいかな・・・?!)
手芸店などで買えます。
★裁断について
型紙通り裁断するだけなのですが、クロムなめしの革は柔かいため、カッターなどよりはハサミのほうが切りやすい場合が多いです。用具は自分が切りやすいもので行います。
★縫製について
このポーチはミシンで縫います。手縫いはお勧めしません。
どうしても手縫いする場合は、後半に記載してる要領で縫うことをおススメします。
<ミシンの場合>
少しカーブのところは大変かもしれませんが、工業用腕ミシンが無くても、平ミシンだけで縫えます。家庭用ミシン、職業用ミシン、工業用ミシン、どれでも大丈夫です。
ただし、革を縫うことを想定していないパワーの弱い家庭用ミシン・職業用ミシンの場合は、革の胴とマチの周囲を革漉きしておくほうが無難です。
もし、革漉きができない場合は、
できるだけ薄い革(理想的には厚0.6~0.7㎜程度)を用意します。
縫うためには薄くなければならないのですが、
使用に耐えるためには、すぐに破れてしまわない程度の強度が無いといけません。
そこで、胴とマチの床面に、薄い不織布系の芯材を貼って、補強します。
芯材の指定は特にありませんが、
なるべく薄く、しなやかで、革のハリを出せるものを選びます。
おススメは、0.4㎜厚くらい、不織布、接着用シールが付いたもの。
革にはアイロンがかけられないため、通常、芯材は、自分で糊で貼るタイプか、シール付きタイプを使いますが、今回は、シール付きのタイプの芯材が良いです。
今回の革の材料は厚みがあまり無いのと、クロム鞣しのため、糊が表に染み出す恐れがあり、糊での接着はおススメしません。
芯材を貼る位置は、ミシンをかける部分を避けて貼ります。
革のパーツを裁断したら、予め貼っておきます。
<ミシンの押え>
カーブが縫いやすくなるように、小回りがきく押えを選びます。
<糸>
糸の番手は、30~40番手くらいが良いと思います。
あまり細い番手だと切れやすくなりますし、あまり太い番手だと、革を表に返した時にゴロゴロと邪魔になります。
<(おススメしませんが、)手縫いの場合>
通常の穴あけ方法での手縫いはおススメしません。
理由は、菱目打やヨーロッパ目打で斜めに穴開けすると、ひっくり返した際、縫い穴の端が表に見えやすい点にあります。
革がところどころ切れているようにも見え、あまり綺麗ではありません。
どうしても手縫いする場合は、ちょっと大変ですが、ポンチで穴開けして縫うか、短い1本目(開ける穴が1つの時に使う目打ち)を使って、斜めではなく直線に縫い穴を開けて縫えば、表にかえしたときに糸が見えにくくなります。
ポンチの穴の大きさの目安は、糸が通る大きさになるので、以下のような感じです。
糸のΦが0.55㎜の場合:直径0.6㎜のポンチ
糸のΦが0.45㎜の場合:直径0.5㎜のポンチ
[縫い穴のイメージ]
/ / / / / (斜めに穴を開ける→NO!)
-----(まっすぐ穴を開ける→YES)
また、1.5ミリピッチ位で穴開けして縫わないと、角(コーナー)の丸みが綺麗に出ないので、なるべく幅が細く、ピッチの小さいポンチや目打ちを使います。
★続きは次の記事で★