レザークラフト研究

横浜で小さなレザークラフト教室をしています。

2室に分かれたダブルファスナーポーチ 作りかた 1.概要編

知人の依頼でこんなダブルのファスナーのポーチを作ってみました。

2つの部屋に分かれていて、それぞれファスナーで開閉します。

後ろ側にナイロンテープがあるので、ウエストのベルトに通して使うことができます。

 

2室に分かれたポーチ(ダブルのファスナーのポーチ)茶1

2室に分かれたポーチ(ダブルのファスナーのポーチ)茶2

2室に分かれたポーチ(ダブルのファスナーのポーチ)茶3

 

調子に乗って、色違いも作ってみました。

2室に分かれたポーチ(ダブルのファスナーのポーチ) 赤

2室に分かれたポーチ(ダブルのファスナーのポーチ)白

 

【概要】

 

写真のようなポーチでは、「クロムなめし」という、とても柔かくしなやかで、表面の加工により水をはじきやすい革をよく使います。

また、ミシンや手縫いによる「内縫い」(このポーチは内縫いで作っています)に適しています。

 

「内縫い」は文字通り、外側から縫い目が見えません。

内側に縫い目があるということは、革の裏側(床面)から縫って、袋状に縫いあげてから、表にひっくり返す、という手順で作ります。

 

 

★材料について

 

<革>

 

革は必ずクロムなめしの柔かい革を使います。

ここでいう「柔かい」の程度は、鞄を縫って作っても絶対に自立しなさそうな、ぐにゃぐにゃの柔かさのことです。

革材料専門店以外でも、大きめの手芸材料店などでも売っている場合があります。

革の厚みは、厚くても1㎜まで、が良いと思います。

 

<ファスナー>

 

普通のファスナーでも、

ポーチの写真のような、頭合わせタイプのファスナー(スライダーが2つある)でも、

どちらでも良いです。

 

頭合わせのファスナーにしておくと、好きな位置で閉められるため、特にウエストのベルトに付けたい場合は、身体をあまりひねらなくても楽に開閉できます。

 

 

<プラスチック製パイピング芯>

 

今回のこのポーチでは、革が非常に柔かいため、成型するために、細いプラスチック製の、パイピング芯があったほうが作りやすいです。

手芸店などで買えます。

 

ただ、経年により、この手のプラスチック系のパイピング芯は、革が劣化してきた際に中から飛び出してくることがあります。

これはもう仕方がないことです。予めそういう可能性があることをわかっておくと良いです。

 

なお、革漉機がある人は、革だけでパイピング芯のパーツを作ることもできると思います。

 

 

<テープ(ベルトループ用)>

 

素材はナイロン、アクリルどちらでも構いません。

エストのベルトに通して使う目的のため、へたりが早いと困ります。

硬めでしっかりしたテープを選びます。

(例:厚さ2ミリのヌメ革を曲げようとしたときの硬さくらい。

          ちょっとわかりにくいかな・・・?!)

手芸店などで買えます。

 

 

★裁断について

 

型紙通り裁断するだけなのですが、クロムなめしの革は柔かいため、カッターなどよりはハサミのほうが切りやすい場合が多いです。用具は自分が切りやすいもので行います。

 

材料を裁断しました。
(このファスナーは撮影用です。頭合わせ(両開き)タイプのファスナーではありません。)

 

 

★縫製について

 

このポーチはミシンで縫います。手縫いはお勧めしません

どうしても手縫いする場合は、後半に記載してる要領で縫うことをおススメします。

 

<ミシンの場合>

 

少しカーブのところは大変かもしれませんが、工業用腕ミシンが無くても、平ミシンだけで縫えます。家庭用ミシン、職業用ミシン、工業用ミシン、どれでも大丈夫です。

 

ただし、革を縫うことを想定していないパワーの弱い家庭用ミシン・職業用ミシンの場合は、革の胴とマチの周囲を革漉きしておくほうが無難です。

 

もし、革漉きができない場合は、

できるだけ薄い革(理想的には厚0.6~0.7㎜程度)を用意します。

 

縫うためには薄くなければならないのですが、

使用に耐えるためには、すぐに破れてしまわない程度の強度が無いといけません。

そこで、胴とマチの床面に、薄い不織布系の芯材を貼って、補強します。

芯材の指定は特にありませんが、

なるべく薄く、しなやかで、革のハリを出せるものを選びます。

おススメは、0.4㎜厚くらい、不織布、接着用シールが付いたもの。

革にはアイロンがかけられないため、通常、芯材は、自分で糊で貼るタイプか、シール付きタイプを使いますが、今回は、シール付きのタイプの芯材が良いです。

今回の革の材料は厚みがあまり無いのと、クロム鞣しのため、糊が表に染み出す恐れがあり、糊での接着はおススメしません。

 

芯材を貼る位置は、ミシンをかける部分を避けて貼ります。

革のパーツを裁断したら、予め貼っておきます。

 

 

<ミシンの押え>

 

カーブが縫いやすくなるように、小回りがきく押えを選びます。

 

 

<糸>

 

糸の番手は、30~40番手くらいが良いと思います。

あまり細い番手だと切れやすくなりますし、あまり太い番手だと、革を表に返した時にゴロゴロと邪魔になります。

 

 

<(おススメしませんが、)手縫いの場合>

 

通常の穴あけ方法での手縫いはおススメしません。

理由は、菱目打やヨーロッパ目打で斜めに穴開けすると、ひっくり返した際、縫い穴の端が表に見えやすい点にあります。

革がところどころ切れているようにも見え、あまり綺麗ではありません。

 

どうしても手縫いする場合は、ちょっと大変ですが、ポンチで穴開けして縫うか、短い1本目(開ける穴が1つの時に使う目打ち)を使って、斜めではなく直線に縫い穴を開けて縫えば、表にかえしたときに糸が見えにくくなります。

ポンチの穴の大きさの目安は、糸が通る大きさになるので、以下のような感じです。

糸のΦが0.55㎜の場合:直径0.6㎜のポンチ

糸のΦが0.45㎜の場合:直径0.5㎜のポンチ

 

[縫い穴のイメージ]

/ / / / /  (斜めに穴を開ける→NO!)

-----(まっすぐ穴を開ける→YES)

 

また、1.5ミリピッチ位で穴開けして縫わないと、角(コーナー)の丸みが綺麗に出ないので、なるべく幅が細く、ピッチの小さいポンチや目打ちを使います。

 

 

★続きは次の記事で★

leatherworksthalia.hatenablog.com