レザークラフト研究

横浜市で小さなレザークラフト教室をしています。小物から鞄まで

革の部位・繊維の流れ のお話 ショルダー、ベリー、ベンズ、バットって?

革の部位の名前や、どんな特徴があるか、レザークラフト関連の本に載っていることが多いので、一度は読んだことがあるかもしれません。

でも、この知識、いったい、何のために、必要なのでしょう?

この記事では、それを考えてみようと思います。

 

 

【革の部位の名称】

 

革の部位は、以下のような区分があります。

 

・首:ヘッド(head)

・肩:ショルダー(shoulder)

・身体の中央からお尻:バット(butt)、または、ベンズ(bend)

・腹:ベリー(belly)

 

牛革は大きいので、背中の所で半分に割って(背割り)、「半裁」というサイズで販売されていて、約 1 x 2.5m 位はあり、結構、大きいです。

半裁 side leather



また、背割りをしないでショルダー部分だけをカットしたものは「W(ダブル)ショルダー」。

W(ダブル)ショルダー double shoulder

なお、ショルダーには、「トラ(トラ目)」と言われる、特有のシワがあります。

最近は、このシワを活かして、デザイン的に使うことも増えているようです。

トラ目 wrinkle

 

同様に、お尻側の部分だけをカットした「W(ダブル)バット、またはW(ダブル)ベンズ」。

Wバット(Wベンズ) double bends

 

背割りする前の革全体は、「丸革」と呼ばれて、

羊など、牛よりだいぶ小さな動物の革は、丸革で売られていることが多いです。

 

また、革の大きさは、「デシ(DS)」という単位が使われていて、面積は、

1デシ(DS)=10x10㎝ 

 

牛革を半裁で買う場合は、牛の1頭1頭の大きさに個体差があるため、半裁の大きさというのにも個体差が生じます。約220DS~250DS 位、が多いと思います。

 

革の部位の名称については、名称など全く知らなくても、レザークラフトをすること自体に影響はありませんので、「革を買う際に初めて必要になってくる情報」といえると思います。

 

 

 

【革の繊維の流れの方向】

 

次に、革には繊維が流れているのをご存じでしょうか?

 

私はレザークラフトを始めるまで、革の繊維とか、それがどの方向へ流れているかなんて、もちろん考えたこともありませんでした。

レザークラフトを始めたばかりの頃は、書籍を読むたびに革の部位や繊維の流れについて書いてありましたが、単なる牛に関する説明の一部なのだろうと思い、特に気に留めたこともありませんでした。自分に必要な情報ではなかったのです。

では、書籍には頻繁に説明が出てくるのに、なぜ自分には必要な情報ではなかったのか?

それは、初心者がよく使う、いわゆる「レザークラフト・キット」の場合、そもそも縫えばすぐ出来上るように、革が必要な方向にカットされているため、購入者が繊維の方向などをわざわざ考える必要が無かったからです。

 

ですので、繊維の流れに関する情報も、「革を買って、自分でパーツをカットすることになって、初めて必要になってくる情報」といえると思います。

 

繊維については、一般的に、動物の背中の所が繊維が締まって伸びづらく、首、尻尾、お腹、脚へと、背中から離れていくほど繊維が緩くなっていきます。

繊維の流れの方向は、このような感じです。

繊維 fiber

 

 

【繊維の流れの方向は、革の伸びと関係する】

 

先ほど、革の繊維の流れる方向は、パーツをカットしていく際に、必要になってくる情報です、と書きました。

具体的な作業としては、パーツをカットする際に、繊維が縦(垂直)に流れているか、横(水平)に流れているか、自分で考えて型紙を置く方向を決め、そして、革をカットする、ということになります。

 

特に小物の作品の場合、もし推奨される繊維の方向とは逆の方向にパーツをカットしてしまっても、仕上がった時点では、作品への影響がそれほど大きく感じられることがないため、実際には繊維の方向など、あまり気にせず革をカットしている場合も多いのではないかと思います。

でも、革は、使っているうちに、伸びていきます

たとえ伸びやすい方向にカットしていなくても、革で作られた物を使っていれば、革自体はいつか必ず伸びていきます。

できれば、一部の革だけがすごく伸びてしまった不格好な物を使うよりは、全体的に均等に伸びた物を使うほうが良いですよね。

 

例えば、カードケースを作る場合に、一番上段のパーツだけ伸びやすい方向で革がカットされていて、他の段のパーツは伸びにくい方向でカットされていたと仮定すると、数か月もすると一番上段だけがかなり伸びてしまい、不格好な感じのカードケースになってしまいます。

これを防ぐには、カード入れのパーツは全て同じ繊維の流れの方向でカットする、そういうことが必要になってきます。

 

特に、作品に革を曲げる部分がある場合、繊維がどの方向で流れているか、ちょっと大切になってきます。

 

例えば、カブセ(名刺入れや鞄などで、蓋になる部分)のような曲げるパーツをカットする場合、革が曲がりやすい方向でカットすると良いです。

カブセは、通常、上から下へ、垂直方向に蓋を閉めることが殆どなので、横(水平)方向に繊維が流れている状態で革をカットすると、曲げやすいです。

 

もし逆の繊維の流れの方向でカブセのパーツをカットすると、繊維の抵抗で革が曲がりづらく、カブセはピッタリと閉まらずに、反発で少し浮いた状態になってしまいます。

ホックなどで留めるように作ってあれば、この浮いた状態は何とかごまかせるのですが、留めが無い場合は見た目が不格好になります。

この場合はしかたないので(笑)、何日間か重石を載せるなどして、形を無理やり成型するしかありません。

 

それでは、最後に、定義を書いておきます。

 

革の繊維が縦の方向(垂直方向)に流れている場合、

縦方向には伸びにくく、横の方向(水平方向)には伸びやすいです。

楽器のアコーディオンを思い浮かべると、少しわかるかもしれません。

 

逆の場合は、簾(すだれ)やブラインドなどを思い浮かべると、わかりやすいかもしれません。

 

 

とはいえ、「半裁」ほど大きなサイズの革を持っている場合は、自由に好きな箇所でパーツを切り出せますが、「切り革」のサイズの革しか持っていない場合、そのサイズ内で欲しいパーツを全てカットしなければならないため、それほど自由がきかない場合もありますよね。

いつでも完全に繊維の流れの方向を考慮できるか?と言われると、現実には難しい状況も多いです。

 

また、既に「切り革」になっていて、見た目だけでは繊維の流れの方向が分かりづらいことがあります。

その場合は、革を手で実際に曲げてみて、曲げやすい方向を確認すると良いです。

 

 

難しく考えるとパーツが切り出せなくなりますし( ´∀` )、はじめはあまり気にしないで良いと思います。

レザークラフトをしているうちに、だんだんと自然に覚えていくようになります。

 

 

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